居住と市民権取得に関するプランニングの分野において世界的リーダーであるヘンリー&パートナーズ(ロンドン)は、「Global Residence and Citizenship Programs(GRCP)2015」を発表しました。洞察に満ち、130ページにも及ぶ同レポートでは、今日世界で提供されている最も人気の高い投資による居住権取得に関する19のプログラムを、前例の無い客観的かつ科学的な方法を用いて分析しています。

同レポートは分かりやすい3つの章で構成されており、最初の章ではトムソン・ロイター(パリ)のダミアン・マルチネス氏、ナイト・フランク(ロンドン)にて居住に関する研究部門のグローバル主任を務めるリアム・ベイリー氏、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(ロンドン)のイレーヌ・ミア氏、ベーカー&マッケンジー(チューリッヒ)の役員マーニン・J・マイケルズ氏、フラゴメン法律事務所(ロンドン)の業務執行役員キャロン・ポープ氏、オックスフォード大学の移民観測所所長マデリン・サンプション氏を含む、著名な専門家のコメントを紹介しています。

第2章ではグローバル・レジデンス・プログラム・インデックス(GRPI)、第3章ではグローバル・シチズンシップ・プログラム・インデックス(GCPI)の分析結果の詳細が記されています。

上記の2つのインデックスは、世界各地の居住と市民権に関するプログラムの価値をベンチマークプロセスを通じて比較評価した結果を反映しており、移民法や、税制、生活水準、透明性、危険度、コンプライアンスの問題など、様々な要因を多角的に分析し、世界の投資移民プログラムを総合的に考察してランク付けしています。

GRPIに基づく主要考察-トップはポルトガル

調査対象の19の居住プログラムのうち、ポルトガルのゴールデン・レジデンス・パーミット・プログラムが今年度における最も優れた投資による居住権取得プログラムとして選ばれました。ちなみに第2位はオーストリア、第3位はベルギーのプログラムでした。

プログラムのランク付けは次の10種類の指標に基づいています:評判、生活水準、税制、ビザ無しで渡航できる国の数、居住権取得の手続きにかかる時間および手続きの質、コンプライアンス、投資条件、総合費用、市民権取得までにかかる時間、市民権取得の条件。

ポルトガルは、これらの10種類の指標の内、総合費用の点でトップでした。その理由は、必要とされる合計投資額が他の居住権プログラムに比べて大幅に少ないためです。

またポルトガルでは、個人および企業の両方において居住者に課される税金の負担が比較的軽いため、税制の点でもマルタ、モナコ、アラブ首長国連合と並んで首位でした。さらに、ビザ無しで渡航できる国の数は25か国で、この点でも同じくシェンゲン協定加盟国であるマルタ、モナコ、スイス、ラトビア、オーストリア、スペイン、ベルギー、ギリシャと並んでトップでした。ちなみに米国は2位でした。手続きにかかる時間および手続きの質の点でも、手続きがシンプルで効率的なポルトガルはマルタ、スイス、オーストリアと肩を並べてトップでした。

投資家やコンサルタントが抱く投資先としての各国のイメージの印象に基づく「評判」の指標では、2位のカナダと僅かの差でスイスがトップに立ち、オーストリアが3位でした。ただし、生活水準の点ではオーストリアがトップで、カナダは2位、スイスは3位でした。また、オーストリアは前回の調査に続き、投資条件の点でも首位に立ち、ベルギーとマルタがそれぞれ2位と3位を占めました。

市民権取得の条件に関する指標は、必要最低限の年数を満たした後、帰化の資格に必要とされる条件を分析したものですが、興味深いことに非EU加盟国のオーストラリア、カナダ、米国が上位を占めました。

IMD世界競争力センター(スイス、ローザンヌ)のシニアエコノミスト、ボルジョー・ピエラッツィ氏は以下のようにコメントしています。「IMDの世界競争力ランキングとグローバル・レジデンス・プルグラム・インデックスは、若干異なる点があるものの、大幅に似ています。競争力ランキングでは、シンガポール(3位)、香港(4位)、アラブ首長国連邦(8位)は上位半分に属していますが、グローバル・レジデンス・プログラム・インデックスでは、これらの国は下位半分(それぞれ14位、16位、15位)に属しています。また、グローバル・レジデンス・プログラム・インデックスで総合トップだったポルトガルは、競争力ランキングでは43位(下位半分)にランク付けされています。」

GCPIに基づく主要考察-マルタの個人投資家プログラムが大幅にリード

GRPIと類似した手法を採用しているGCPIでは、マルタの個人投資家プログラム(IIP)が76ポイントで首位に立ち、これにキプロス(63ポイント)、オーストリア(61ポイント)、アンティグア・バーブーダ(60ポイント)、セントクリストファー・ネイビス(59ポイント)、グレナダ(48ポイント)、ドミニカ(45ポイント)が続いています。

また、7つの投資による市民権取得プログラムも、GRPIと若干異なるものの類似した以下の10種類の指標を用いてランク付けされています:評判、生活水準、ビザ無しで渡航できる国の数、手続きにかかる時間、コンプライアンス、投資条件、居住条件、移住に関する柔軟性、市民権の申請対象国を訪問する必要性、透明性。

上記のすべての指標において上位3位内にランク付けされているマルタは、申請者の経歴が細かく調査されるという点で、特にコンプライアンスおよび申請手続きに関して群を抜いてトップの座を占めています。ちなみに2位はアンティグア・バーブーダ、3位はオーストリアでした。

マルタの個人投資家プログラム(IIP)は、世界で最も先進的かつ制限が厳しい投資による市民権取得プログラムとして広く認識されていますが、徹底した調査に基づくGRCPレポートのランキングにおけるマルタのポジションがまさにこれを実証しています。

興味深いことに、評判、生活水準、ビザ無しで渡航できる国の数においてトップのオーストリアは、居住条件と投資条件において最下位でした。また、キプロスはすべての指標において安定したパフォーマンスを維持し、特に移住に関する柔軟性の点でマルタとオーストリアをかわし、トップでした。

編集者への注記:

代表的な引用
「2つのインデックスに基づくこのレポートは、現状を理解する上で非常に参考になります。というのもここ数年、世界中で居住権および市民権取得に関するプログラムの数が急増しているものの、これらのプログラムの専門的な比較分析はもちろん、信頼できるランク付けは非常に稀だからです。比較分析によって利用可能なプログラムの賢明な選択が可能になることは言うまでもありません」フローニンゲン大学(オランダ)のディミトリー・コチェノフ教授(同レポートの「Introduction: A Glimpse of Global Trend」より)