
カリブ海東部に位置するアンティグア・バーブーダは、英連邦に属する独立国のひとつです。トルコ石を連想させる美しく澄んだブルーの海に囲まれ、365のビーチを有する緑豊かな熱帯の島は、まさに魅力的な南国のパラダイスで、世界で最も美しい場所のひとつと言われています。そのため、観光産業が同国の国内総生産の主な原動力となっており、特に米国、カナダ、欧州からの観光客が多く、観光産業が同国の収入の60%を占めています。
アンティグア・バーブーダは、国連や英連邦、カリブ共同体、米州機構を始めとする多くの国際機関に加盟しています。この国のパスポート所有者は、英国やカナダ、シェンゲン協定加盟国を含む、およそ130ヵ国にビザなしで渡航できます。ただし、他のカリブ諸国の市民と同様に、米国のビザ免除プログラムに参加していないため、米国に渡航する場合はビザが必要です。
2012年11月に開催された「Global Residence and Citizenship」カンファレンスでアンティグア・バーブーダ政府が発表した投資による市民権取得プログラムは、2013年3月に下院・上院両議会にて承認されました。同プログラムに関する法律および規制は「The Antigua and Barbuda Citizenship by Investment Act, 2013」と「The Antigua and Barbuda Citizenship-by-Investment Regulations, 2013」に定められています。
必要条件
投資による市民権取得プログラムに申請する場合、申請者は国に多額の経済的貢献を行うことが求められます。それと引き換えに、徹底したセキュリティチェックを含む厳正な審査に合格した申請者とその家族には市民権が付与されます。申請者は18歳以上で、その他の申請条件を満たし、以下の3種類の投資オプションの内のひとつを選択する必要があります。
- 承認されている不動産プロジェクトのいずれかに、40万米ドル以上の投資を行う。なお、行った投資は5年以内、または投資対象のプロジェクトの大部分が完成する前に売却することはできない
- 指定事業に投資家一人の場合は150万米ドル以上、二人以上の場合は計500万米ドル以上を投資する。二人以上の場合、一人当たりの最低投資金額は40万米ドル
- 20万米ドル以上をNDF(National Development Fund – 国家開発基金)に寄付する。なお、寄付金の返却は不可
NDFは2006年の財政法の第42条2項の下で設立された特別基金で、官民共同事業や、医療、教育、環境管理、青少年の育成、スポーツおよび文化の推進に関するサービスを提供する公認慈善団体を含む、政府支援のプロジェクトへの資金調達を目的としています。
上記のオプションのいずれにおいても、申請者本人、配偶者、扶養対象の18〜25歳の子ども、扶養対象の65歳以上の親に対して一人当たり5万米ドルの手数料が課され、18歳未満の子どもの場合、手数料は2万5,000米ドルになります。ただしNDFのオプションに限り、4人家族の場合、申請者本人とその配偶者にはそれぞれ5万米ドルの手数料が課されるものの、残り二人の家族に関しては手数料を免除するという期間限定のオファーを政府が発表しています。
また、申請者本人とその配偶者にはそれぞれ7,500米ドル、12歳〜17歳の扶養対象の子どもには2,000米ドル、18歳〜25歳の扶養対象の子どもと65歳以上の扶養対象の親にはそれぞれ4,000米ドルのデューディリジェンス料金が課されます。
なお、申請者とその扶養家族に犯罪歴がなく、恩赦を受けたことがなく、いずれの国においても最長禁固刑が6カ月以上の犯罪で有罪判決を受けたことがないという条件も満たす必要があります。さらに、アンティグア・バーブーダがビザ免除の協定を結んでいる国へのビザ申請を却下され、却下した国へのビザを取得できなかった人は、投資による市民権取得プログラムに申し込むことはできません。また、国の安全や評判を脅かす可能性がある、あるいは犯罪調査の対象とされている人も市民権を取得することはできません。
審査プロセスおよび所要時間
投資による市民権取得プログラムを管理しているCIU(Citizenship-by-Investment Unit)と呼ばれる政府機関が同プログラムへの申請を審査します。CIUは、申請内容を徹底的に審査し、必要に応じて申請者を面接します。CIUは厳正なデューディリジェンスを実施し、申請者が申請の際に虚偽の情報を提出した場合や、関連する情報の提出を怠った場合は、申請を却下します。アンティグア・バーブーダの投資による市民権取得プログラムへの申し込みの際に提出が求められる書類はそれほど多くはなく、手続きも比較的シンプルです。
申請が承認されると、アンティグア・バーブーダでパスポートを受け取ることができます。または、アンティグア・バーブーダの大使館や領事館、その他同国の外務省によって指定されているオフィスで国家への忠誠を誓い、パスポートを受け取ることもできます。
特に問題がない場合、申請書の提出から3〜4カ月でパスポートが発行されます。
不動産投資のオプションを選択した場合、不動産プロジェクトによって審査にかかる時間が異なることがあります。従って、申請に必要な書類を不動産プロジェクトの開発者から入手することができる不動産プロジェクトを選ぶことが大切です。
二重国籍
アンティグア・バーブーダには、二重国籍に関する制約はありません。
アンティグア・バーブーダでは、キャピタルゲインや相続は非課税です。個人に対する所得税が2005年に再導入され、現在の基本税率は10%ですが、月の収入が2万5,000東カリブドルを超える、または年間の収入が18万東カリブドルを超える場合、税率が25%に増加します。また、年間3万6,000東カリブドルまで非課税です。一時的にアンティグア・バーブーダに滞在している場合は、同国内で発生した収入に対してのみ税金が課されます。一方、永住権を持っている場合や、1年の内183日以上アンティグア・バーブーダに滞在する場合は居住者とみなされ、同国の内外で発生した収入が課税対象となります。ただし、所得税法第5条111項の改正が提案されており、居住者の課税対象を国内で発生した収入に限ることが提案されています。また、法人税の税率は純利益の25%と定められていますが、一定の基準を満たす企業には魅力的な税率の引き下げが認められています。
固定資産税については、アンティグアにある不動産はすべて課税対象ですが、バーブーダではそうではありません。課税額は、不動産(居住用または商用)の現在の市場価値、修理費、不動産の等級に基づいて適用される税率によって決定されます。
- アンティグア・バーブーダのパスポート所有者は、カナダや香港、シンガポール、英国およびその他のEU諸国を含む約130ヵ国にビザなしで渡航できます
- 申請が承認された場合、申請者とその家族に市民権とパスポートが付与されます
- 英連邦の加盟国であるため、その市民は英国およびその他の英連邦加盟国において一定の特権を利用できます
- 北米や欧州との間のフライトが充実しているアンティグア・バーブーダは、生活する場、または別荘を構える場としてとても魅力的です